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〜ミスターナレッジの軽美学〜
眉のはなし
ひげのはなし

鏡のはなし
メガネのはなし
ひげのはなし
ツタンカーメンの絢爛豪華な黄金のマスクの顎には、四角で反りをもつ装飾的なつけひげがあるがペルシャの国王のように自分のひげを黄金の紐で編むひともいたようだ。

ひげで有名なのはカイゼルひげで、日本でも日露戦争の後に流行したが先端が跳ね上がった口ひげで、カイゼルというのはドイツ皇帝ウイルヘルムU世(1859〜1941)のことである。夏目漱石の『吾輩は猫である』に「彼はカイゼルに似て八字髯を蓄うるにも係らず・・」とあるし三島由紀夫は『鹿鳴館』で「大将は見事なカイゼル髭をはやしている」と書いている。ひげにはいろいろあるが、二葉亭四迷の『浮雲』には「まず髭から書きたてれば、口髭、頬髯、顋の鬚、暴に興起した拿破崙髭そのほかにも矮鶏髭、狢髭、ありやなしやの幻の鬚と、濃くも淡くもいろいろに 生分る」と書かれている。髭(し)は口、髯(ぜん)は頬、鬚(しゅ)はあご、と同じひげでも生える場所で字が異なるが古代はひげといえばあごひげだった。
 神の禁制を破って、知恵の木の実を食べたために罪の印としてアダムにひげが生えたというが、神がアダムを創造したとき、ひげがあったとする学者もいる。キリストの顔にひげが定着したのも威厳を表する必要からというが、ミケランジェロの名作『最後の審判』のキリストにはひげがなく、ひげのないキリストを描いた代表作といわれている。

エリザベスT世時代には、ひげの形以外に色にもこだわっている。当時の理髪師は、顔の型に合わせるだけでなく、ひげで顔の欠点を修正することを研究したといい、フランス風、イタリア風、スペイン風などがあり「相手にどう思わせたいのか」と客に訊ねてからひげの形を考えたというが、男性がひげのおしゃれに夢中なので、ひげに税金が課せられることになったが、最低の税率でも年間3ペンス4シリングという、かなりの高額のためひげは上流階級のものになり、地位を示すものに変わっていった。ロシアのペートル大帝もひげに税金を課している。

十字軍の頃,ひげは1週間に一度そればよいといっていたので、剃ったあとがブラシのようで、女性達はキスを嫌ったとか・・。剃ったあとがスベスベになるのは石鹸が安く買えるようになる16世紀頃と言われている。剃刀は理髪師の道具として重要であるが原始人は貝殻でひげを1本ずつ切っていた。ギリシアでもローマでも剃刀ではなく、長いことハサミだった。ひげを全部剃った最初のひとはローマのスキピオ将軍と記録にあるというが、ローマには成人に達すると、ひげを剃って神に捧げる習慣があり、
ネロ帝は最初に剃ったひげを真珠をちりばめた黄金の箱にいれて、ジュピターの神殿に納めたという。日本で最初に剃刀を使ったのは織田信長で、月代(さかやき)を剃ったといわれている。

ひげを剃るのは難しいため理髪師の世話になり、そこでさまざまな話をするので理髪師のところには情報が集まる。ギリシア語やラテン語の「理髪師」はおしゃべりとか、無駄口をいう人の意味もあり、形容詞の場合アメリカ口語では男性の四重奏になる。安全カミソリはアメリカの、キング・C・ジレットが1855年に発明したもので「瞬時に人間の顔を変えるジレット」といわれたが許可の取得は1901年12月2日で1903年から生産されたが、その年に買ったのは51人だったが1年後には9万人になっている。

戦国時代にひげが多い武将を髭男といって褒め、ひげがないと女面とか片輪面といってさげすんでいるが、秀吉にはひげが無かったらしく、文様三年の吉野の花見のときに髭をつくらせたと『太閤記』にあるが、朝鮮役のときも立派な大ひげをつけて名護屋にいったといわれている。ひげが生えるのは男性ホルモンの影響なのだから、と秀吉のことを考えてしまうが、野上弥生子の『秀吉と利休』の秀吉は「唇の線なりにそろえた毛の柔らかい黒い髭が、鼻の先にもりあがるほど・・」と書かれている。ひげを生やした武士が江戸時代にいないのは奴凧にみるような鎌髭を徳川幕府が1670年と1686年の二度にわたって、老人以外はいけないと禁止したためかもしれない。 無精ひげは女性に対して失礼というアメリカでは、ひげが濃いと朝剃っても夕方には伸びてくる。改めて剃るのも大変だからと、それを隠す男性用化粧品を考えたのはマックスファクターであるが、30年以上も昔のことですべすべ肌を好む若い男性の多い今、ないのは惜しい気もする。


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